3日でまたまたまた書いた! 『3日で書け!』お題:ウーロン茶に対する感想文集


オマタセシマシタ [2-0-2-14]※2023年10月31日16:29現在



 ちょっとね、いますっごく疲れてる。何が疲れているかというと、感想文集を作るにあたって紙面を見ながらタイトルと作者名、TwitterIDを人力で転記してたんですよ。この「3日で書け!」という企画の。


 そしたらなんですか。タイトルと作者名転記するだけで68分かかりましたよ。なんなんですか参加者数七十人って。前回五十八人でしたっけ? 「もう五十人超えたから、感想書くの厳しいな~」なんて言ってる場合ではなくて、多分次回か次々回あたりに百人超えるんじゃないですかね。なんなんですかねもう。大盛り上がりじゃないですか。盛況で何よりですわ。えぇ。ほんと。


というかですね、せめてタイトル、作者名、TwitterIDだけでもデータ化したものを手元に置いておけば多少は楽になるでしょうね。次からPDFからのコピペにしようかしら。何を手作業で転記してるんだか。文字もちっちゃいしね。目が疲れましたよ目が。あとこのキーボード。最近友人から譲ってもらったキーボードなんですがね、これJIS配置じゃなくてUS配置なんですよ。しかも真ん中から真っ二つに分かれるの。こんなのプログラマーのギークしか使わないよ。マジ。


 あ、そうそう、本題ですよ本題。ウーロン茶ですってね、テーマ。いいテーマじゃないですか。まぁこの文章を打ち込んでいる時点ではまだ本編というか、作品は読んでないんですけどね。前回のエキセントリックよりはずっとずっと皆さん書きやすかったんじゃないですかね。違います? 違いますか。そうですか。失礼いたしました……。


 まぁ、言っていいのかなんなのかわかんないんですけど、渡辺八畳先生、絵も上手くなってますよね。毎度味のある絵です。ただ、今回挿絵が発表されたときにツッコんでいいのかどうなのかほんと迷ったんですけど、「どうぞ」って差し出してる人の手元のペットボトルの中身が減っていないところを見ると、これ差し出してるのはワンチャンめんつゆ説ありません? ありませんか。そうですか、失礼いたしました……。


 今回もエクストラステージとしてお題が二つ足されているそうですが、全員が全員それに従っているわけではないので、エクストラはあくまでもエクストラとして、メインテーマのウーロン茶だけで鑑賞しようと思いますよ。


 っていうかみんなアレですよね、こんな感想短文集なんて需要ないでしょ。創作はどこまで行っても自己満足の域を、素人では抜け出せないと思っているんですが、こんなの自己満足っていうか、完全に押し入れの中で粘土捏ねてるようなもんですよ。なんなんですかね。なんなんですかねっていうのは私自身に対してであって、もう私が私にてめーなんなんだよぉーってつかみかかっても端から見たら狂人なので、まぁ狂人ということでここはひとつ収めていただいて……(誰に対して言っているのだろう)


じゃ、やりますかー。





・あなたと(椿美砂子 @misako_tsubaki)

 すべてひらがなに開かれた詩文。作中での「あなた」が指す隠喩の先はわからないが、最後の三行が意味深。改行に伴う節と節の間で、その前後がうまい具合につながっていて、節を変えることで場面や詩情を変える、というよりは連鎖して良い作品になっていると思う。



・鳥の影を見上げながら飲み干すウーロン茶(夢沢那智 @Nachi_yumesawa)

 アイロニカルな印象を受ける詩文。ディストピアのような光景を思い浮かべる単語が続いているが、結局のところ多分だが、この作品の中核は「アタシの青春」なのではないかと邪推した。アタシ、に対して「少女たち」という対比は何か意味ありげな雰囲気がする。



・溢れるのは…(久遠恭子 @kyokopoyo)

 鬱屈とした印象から、最後の方にかけてさわやかな印象へと変わっていく。私を透明に、という一方で確かな存在感を信じたいと思う話者のアンビバレントな気持ちには、どこか納得のような共感を抱く。結局のところ、私自身になれた話者は、序盤で語られる後悔など些末なものに捉えられるほど、成長したのだろう。



・興味本位はやめにしよう(串岡七瀬 @kushioka_)

 掌編小説であろうと思う。起承転結のはっきりした構成で、大変読み進めやすかった。居酒屋などで隣席の会話が耳に入ることも多々あろうが、その一方でそれを聞かれているとも思っていないし、聞こうとして聞いているわけでもない他者性のようなものがうまく再現されていると思う。いうなれば、誰もが感じたことのある(あるいは感じていないが位置づけられていた)「安全圏」を言語化したところに妙があると思えた。



・喉仏、くすみカラー(械冬弱虫 @Wimpy_keter)

 意味ありげな詩文だが、恐らくは作者の狙いはそんな深読みをすることに対してのアンチ姿勢でもあるのではないだろうか。全体的に投げやりな一人語りの文体だが、最後の最後の一行がそんな予感を感じさせる。



・レゲエパンチ(加藤万結子 @uta_kato)

 エッセイとお見受けしたが、お酒が好きな人がお酒を断たれるというのは非常につらい気持ちがする。全体的に皮肉ったような文章だが、第六段落で急に入る場面転換から、やはり少し過去への思い入れというか、帰れるのならば、という印象を受けるのは私だけだろうか。最終行で変わっていない、と断言はしているが、その実、変わっているのは確かだし、そのことに対して断言をするあたりにもその印象を抱かざるを得ない。



・三杯のウーロンハイ(これ @kitalin_203)

 おそらくは何周忌かの前日の様子を描いた掌編小説であろう。三人がそろっていた当時、ウーロンハイは飲んでいなかったようだし、しかし現在三杯目のウーロンハイが置かれているのは、当時を懐かしむわけでもなく、現在に寄せたとしても故人は現在にはいるわけではないので、どこか登場人物二人の自己満足に近いものを感じる。しかし、一方で自己満足で当然であろうとも思う。作中で語られている通り、六年という月日で、吹っ切れたとも言い難い、しかし常に悲しみに暮れているというわけでもない、という微妙な距離感こそ、この作品の妙なのだろう。



・最後の天気予報(川嶋ゆーじ @yuji_shinon)

 ストーリーを読ませる詩文なのだろう。地球最後の日の前日の日常を描くのはよくある手法であるが、最後の二行における俗っぽさのようなものが爽快さを感じさせるほどである。何も知らないお姉さんに対し、多くの視聴者が感じているであろうその俗っぽさを、何かしらを知っている話者もまた感じているというのもどこか痛快である。



・中国のお茶(よしおかさくら @sakuraga396)

 詩文なのだろうが、作者(あるいは話者)の回顧録でもあるのではないだろうか。確か、ウーロン茶が流行ったころにサントリーの缶が自販機で確かに売っていた記憶がある。そして、缶飲料は中身の色を知ることはない。ファーストコンタクトでその視覚的情報が入ってこない、という気づきはなかなか自覚できないものだ。前半から後半にかけて時間が流れていく描写も妙であると思う。



・その味を知らない(青波零也 @aonami)

 SF味を感じる掌編小説である。VR的な世界が思い出される異界において、出された液体の味は確かに知りえない情報だろう。明らかなSF味にもかかわらず、最後の二行においてつづられている文章がどこか、「あぁこんな場面いくらでもあったんだろうなぁ」という日常に近い印象さえ感じさせる。まぁ当然、こちら側としては異界のことは結局他人事なのは確かなのだが。



・二本の行方(神野美紀(神は示扁の旧字) @katzeseim)

 何かの導入のような、そんなエッセイ調の掌編小説であろう。果たしてどこからどこまでが主人公にとっての事実で、どこからどこまでが目の前の彼の口から出たまやかしなのか定かでない、そんな不安定さが妙である。何かしらのミステリかなにかの出だしのようなので、もうちょっと長く続きがあればいいのかもしれない。もちろん、企画内では無理だろうが。



・ハンドルネーム烏龍茶(あかりん @shimaenaga311)

 最後の二節に虚しさというか、そんなものを感じさせる詩文。イロコイの中の一人であるにも関わらず、話者自身はどこか客観的というか、他人事というか、そんな印象の冷たさのようなものを感じる。



・工程と味(アララマス @alamamasg)

 詩文というか散文作品というか、ちょっと判断に迷う作品であった。ただ、一つ言えるのは、最後の一行において、あんなにも、と表現している以上、今現在話者は目の前に二つのお茶を置いていないということ。それは、想像の上でその二つを思い出し、比較し、調べるという「工程」を行なっていると考えていいのではないだろうか。



・烏龍茶ってそう言えば烏が入っていたね(草野理恵子 @riekopi158)

 明確に詩文なのだろうけれど、本作は詩的な表現に富むというか、どこからが現象的で、どこからが空想的なのか判断が付きかねる作品だった。作者の手のひらで転がされるようなこの何処ともつかない、どこに立ち位置を置けばいいのかわからないという感覚は正直好きではないのだが、本作についてはどこかスッと読み込めた。なんだったのだろう。正直、本作を語るには私は技量が足りない気がする。



・緑と青と(サンレイン @sunrain2004)

 邪推するならば、恐らく作者のほかの作品にも登場する登場人物たちによる掌編小説だろうと思う。単品として語るのであれば、読みにくい表現もなくオチも上手についた、きれいにまとまっている作品だと思う。ただ、強いていうなれば、ウーロン茶というお題を消化するためだけに書かれている、と言っても過言ではない構成なので、何かこう、もっと、なんというか、高次に至る捻りというか、捻くれというか、が欲しかったようにも思える。



・繰り返す万能感と賢者タイム(七色 @0nanairo0)

 スピード感を感じさせる作品である。句点が二か所にしか使われておらず、その最初が万能感タイム、二つ目が賢者タイムなのだろう。共感性の高い作品だろうと思うが、可能であればこれは空腹時に読みたいと思える。それと、完食するまで正気に戻らないあたり、作中の話者はまだ若い。妬ましい。



・映画をみた(宇ノ倉なるみ @Narumi_Unokura)

 詩文なのだろうが、タイトルと本文の関連性を探ってしまったがためにすんなり読むことができなかったのが私自身の力量不足を感じさせる。結局、恐らくそんなに気にすることはないのだろう。中盤までは現実的な描写なのかと思ったのだが、後半には徐々に詩文らしい表現が混じっていく、その構成自体も作者の狙いなのだろう。



・悪意(ゆりなあと愉快な船 @yuri_summers)

 掌編小説なのだろうが、タイトルの通り悪意に満ちている。どこか胸糞の悪さまで感じさせる作品である。もちろんそのあたりも織り込み済みの作者の手の内なのだろうけれど、一回の通読で何が起きたのかわかる程度の伏せ方の物語構成は非常に読みやすく、わかりやすい。よくまとまっている小説である。とても読後感は悪いが、この私の中の感覚も作者の手のひらの上なのだとしたら、天晴である。



・ウーロンちゃい(へちゃ @gogoyubari39)

 酔っ払いのたわごとのような、そんな癖になる韻律である。「難儀だねー」って、だねーじゃないんだよ。他人事じゃないんだよ。あなたが言い出したんでしょうがあなたが。とツッコミを入れたくもなる。童謡のようであり、しかし入っている内容は明らかに酒飲みのおっさんの調子である。



・閻魔と握手のBIRTHDAY(keisei.hhh(stereotype2085) @Keisei1)

 都都逸みを感じる詩文だ。閻魔と握手、という表現の通り、楽し気であるが、しかし何かやけっぱち感というか、そんな上っ面だけの調子も感じさせる。何かウラというか、隠喩的なものを探りたくなるが、そこまでの技量は私にはない。



・その中華料理の元の味が、僕にはもうわからない(羽島貝 @hajima_kai)

 奇妙な関係性である。怒っていれば最後から四行目のセリフを吐かれたら激昂するだろうが、そうでないところを見ると怒ってもいない。しかし第一節の行動をとられる。不思議な光景であるが、その一連の流れに爽快感というか、何かうらやましさのようなものも感じてしまう。私だけだろうか。私だけだな。



・喉が渇く(羽田恭 @dabunkan200)

 某ゲームですね。行を変えずに文末に反復する同じ表現を用いているのは上等な技術だと思う。作中にウーロン茶をできれば明示してくれ、という主催者の注文もあったが、これに関しては目の前の画面が全てなわけで、それ以外に輪郭を定めないという点においてはウーロン茶という単語を出さないことによって成功した事例の一つでもあるかもしれない。



・紫煙と夜空(木乃咲冨嘉 @M_Night_Smokers)

 コメントを残さない、というコメントを残しておこう。

 というかですよ、まだ半分行ってないの? マジですかー。いやね、提出時間とか考えて、後で感想書くこと考えたらこの部分が真ん中くらい来てくれると嬉しいなーと思ってたんですけど、全然まだまだありますね。マジですか。ちなみに感想本文を書き始めてからここまででちょうど100分が経過しました。いやー、ね、なんというか、マラソンだね、マラソンっていうか、オリエンテーリングだね。一個一個に立ち寄って、ずっとずっと歩き続ける。いやー、ね、なんというか、そうだね。あーもう馬鹿言ってないで次行こうか、それとも一回休憩しようか。とりあえず今100分、タイトル起こしから累計で168分。あーもうちょっと休憩しよう。一日でバーっとやるつもりだったけどこりゃ無理だわ。ちょっと何日かに分けてやっていこう。そうしよう。



・ウーロン女(馬場ナナ @babaa_nana)

 掌編小説である。確かに水をぶちまけるという行為は容易に想像がつく風景だが、その初出は私も分からない。その場面に慣れている主人公は、ウーロン茶という選択をした目の前の女性の心理を理解できないし、恐らくはそれを理由にまた同じ過ちを繰り返すのだろう。過ちというか、それが主人公の気質なのかもしれないが。



・アイスウーロン(けいりん @koukounaries)

 気だるげな印象を持つ掌編小説である。ウーロン茶の制作過程と二人の関係性を絡めて語られる物語だが、最後の段落に語られていることが全てなのだろう。「本来」の形でない関係性は発展しないのだろうか。少なくとも二人の間ではそうだったのだろう。おそらくは二人とも、お互いの素性も本名さえも知らないのだろう。その中途半端性をどう捉えるかによるだろうが、二人はネガティブにとらえた、という結果なのだろう。



・無の反転(あめ @QzJe8ZdUJCy9Miw)

 言葉の一つ一つのチョイスが難解でなく、平易なのだが、その唄われている詩情は極めて機微に富んでいるように思える、そんな詩文である。この中で語られる詩情の裏側を察するには私はあまりにも詩文というものに対して教養がなさすぎるが、言葉のリフレインなどを考慮してみても、やはり妙のある作品であるとお見受けした。



・コーヒーの木と赤い花(子鮨えりみ @8jikan_neru)

 非常に未来への希望を感じる掌編小説である。ささやかな出来事と出来事とが重なっているに過ぎない話ではあるのだが、とてもあたたかなエピソードがあふれている、未来を感じさせる作品であった。ウーロン茶というテーマを消化しつつ、それをフレーバー的な位置づけにとどめ、筋書の主だったところは別に置き成立させていて、それでいつつ指定されたテーマをしっかりとつなぎとめている。秀作であると思う。



・空きペットボトル(.kom @shioyomuhito)

 料理のせい、には?がついているが、無理があるから、という言及に対しては断言的であるあたり、恐らく話者は確信をもって「無理がある」という思いを抱いているのだろう。そのことがとても悲しい。空のペットボトルに入っていたのは本当にウーロン茶なのか、それとも言葉だったのだろうか。全体を通して悲しみを感じる作品であった。



・ガラスと砂のあいだで(柳沼おへろ @oheohero)

 詩的表現としては一読して、大変妙のある秀作であると思えた。時間の経過も想像させつつ、視覚的にも感覚的にも納得、あるいは実感として受け入れられる表現と言葉のチョイスである。不可解に思うのは最初の一文であるが、それをメタ的な一文としてとらえるのか、あるいは詩としての導入としてとらえるのかはさておき、この一文の要不要については議論の余地があるだろう。



・茶の葉(usei @Ri33246502)

 SFめいた掌編小説、と捉えたが、段落の改行がないあたりや、内容などを見るに詩文に近いのかもしれない。ウーロン茶の生成方法について言及する作品は多かったが、それそのものの工程を最後に据えて、それまでの過程をリフレインするあたりの技法は極めて上等。何か、私程度の人間には言葉に表せない魅力を感じる。



・味の拡張現実(四方塚環 @yomotama)

 ボーイミーツガール味を感じさせる作品だが、しかし二人はとっくに出会っていたのだし、その表現は適切ではないだろう。タイトルの通り、同じものを別々の人間が飲むことによって共感性が発生し、また同時にハンドルネームを通しての秘密性も相まって、それを「共犯の味」と表現することは思いつかなかった。発想の妙を感じさせる作品である。



・ミックスフライ御膳、ドリンクバー付き(倉本健介 @keyakibooks)

 こんなにいろんな人が示し合わせたように液体をぶっかける男女の話書く? いや、まぁそれは置いておいて。

 おそらくは、目の前の女性は話者に対してまだ好意自体は持っていたのだろう。しかし、ある種の話者の不貞によってご破算となったわけだが、話者からの未練、ではなく、メニューから選んだチョイスも、ラストシーンの「やさしさ」も、どこか相手から自分に対する未練を感じさせる。この点の感性はなかなか独特で、作者の機微を感じさせる作品であった。



・心のど真ん中(朝海陽音 @keyakibooks)

 二行の言葉の反復がうまく効いている、児童文学にも通じるような詩文である。最後の一節がせめてもの話者にとっての反抗なのだろうが、個人的な印象としては、同居を決め込んだ決意のようなものを感じさせる。タイトルに指摘された真ん中には、自分の中の他者性との同居、というニュアンスがあるのではないかと邪推する。



・わたしとウーロン茶 など(毒りんご @keyakibooks)

 どうも、センダギです。私も文芸はビギナーです。

 ウーロン茶からウーロン茶で終わる節の使い方をあえてしないあたりが妙を感じた。第一節でウーロン茶を語り、最終節の一個前でウーロン茶を使うという点である。ただ、第一節で飲茶を語り、その後各節で飲料を出しているのであれば、直接的な表現や単語で第三節でも飲料を出すと一貫性があったかもしれない。それはさておき、最終節で白湯とするあたりがこの作品の妙なのだろう。



・初恋と烏龍茶(ティア @Kusou_Giovanna2)

 青春の頃を回顧する散文作品である。十年という月日は長いようで短いのだが、それでも相手の名前を憶えていないというところは、やはり意識して忘れようとした結果なのだろう。作中での言及の通り、烏龍茶が諦めを象徴するものであるのならば、この時今現在、語り手は何をあきらめたところなのだろうか。



・烏龍茶に関する小品(宇佐見踏繁 @sea_and_bottle)

 散文作品として、恐らく掌編小説に位置づけられる作品であろう。化かされた、という表現が適切かもしれない内容である。何に?と言われると、それは猫なのだろうか、カラスなのだろうか。それははっきりとはしないが、白昼夢のようなものであるとすれば、すべては語り手の想像の中ででの出来事に過ぎないのかもしれない。



・ウーロン茶の雨(木葉揺 @seek4158)

 一人の中ででの独白か、あるいは語り手が二人いるのか、少し判別に迷う詩作であると思う。ウーロン茶というモチーフに対して、美味しくいただいとく、としていても、最終行では傘を差すというあたりが対比的な描き方の狙いなのではないだろうか。



・烏龍茶(青ノ颪 @NORANEKO_AOKI)

 少々私には難解な詩作であった。言葉遣いが全体として堅く、難しい表現が多くみられるのだが、端々に移るカタカナ表記とのギャップは恐らく狙いなのだろう。



・自分を殺さないために(星野灯 @tomoruhoshino)

 同じフレーズを繰り返しているのだが、句点の位置づけが意味深。各節の先頭でフレーズは展開されているが、そこにだけ句点がある。この句点の区切りは前の節からの引継ぎなのか、それとも冒頭での言い切りなのだろうか。最終節での最終行がまた意味深。多分、と表現するあたりも妙。かなり好きな作品です。



・6時35分 (浪市すいか @namisite_tareka)

 ウーロン茶というテーマにも関わらず、喉奥を通過するのはチョコミント、という直接ウーロン茶を飲む描写を表現しなかった点が好感。前半での時間的な絶対性と、後半での孤独感にどこか悲壮的な印象も受けるが、最終一行ですべてをひっくるめて救いを感じる、そんな詩作であった。



・紅とウーロン(こんにゃくるな @konnyakuruna)

 短歌の連作なので、あまり語るとセンダギのボロが出るので言及は避けますが、3首、挙げるならば烏龍茶のプールと、かくしごとと、天罰の3首を挙げたいと思います。



・烏龍茶 (ツェッツ @voyant_zs)

 これは言及するべきではない、そういう詩作ではない、という印象があるので、あえて言及を避けます。二文字で語る意味まではくみ取れませんでした。申し訳ない。



・湯呑(橘しのぶ @kirainarasatte)

 詩情を含んだ散文作品として受け止めればいいのだろうか。登場人物に対して特段言及がないため、「わたし」含め関係性は読み取れない。しかし読み取らなくてもいいのだろう。最後から三行目が結局のところ全てであり、それまでの過程は単なる風景なのだろうと読み取った。



・死んだ自販機の幽霊(ベンジャミン四畳半 @ShiDa4643)

 掌編小説である。幽霊、という現象あるいは存在に対して何か行動を起こすことのできる主人公がその幽霊を対処するという話だが、それは処理でも救いでもなく、ただ日常的な活動の一環でしかない、という印象を受けた。恐らくは主人公は最後に登場する幽霊を成仏させようともとどめようとも思っていないのだろう。そのどこか空虚さが心地いい作品であった。



・とりあえずの無糖(妻咲邦香 @chiisanakimochi)

 私にとっては非常に情景を浮かべるのが難しい、難解な詩作であり、あまり憶測で言及すると私自身のボロが出そうなのだけれど、最後から二連目で詩の流れが大きく変わっているのは分かった。何とも言えないが、とりあえずの無糖、というタイトルに対して無糖のお茶としてのウーロン茶を据え置くセンスは良いと思う。



・ウーロン茶はもういらない(ぬかるみ/晦 @5000004xxx)

 エロい。まぁそれはともかく。短文であることを前提とするならば、よくまとまった官能小説である。タイトルのウーロン茶はもういらない、というフレーズが作中に登場するまでの流れを読み取れば、恐らくは主人公たる人物は幸せ的なものを得ることができたのだろう。この類の小説はどこか退廃的でどうしようもない結末が多い気がするのだが、本作には救いがあったように思える。



・25分(栫伸太郎 @skwakoi

 視覚的にも楽しめる詩作なのだが、悲しいかな、本誌面では活かしきれていない。一枚にまとめる編集は当然主催者にも求められない。悲しいかな。タイトルの回収が私には読み解ききれなかった。実験作なのであろうと思う。



・二つに一つ(階段ひかげ @kaidan_123)

 紙面に映る文字列を見たとき最初の印象として、非常に几帳面というか、文字列としての整列性を高めた詩作なのだな、と思った。結局のところ、この選択を迫られている主体者たる人物は、出来事を手放しきれず、最後には選択をする。選択肢を与えられているにも関わらず、この人物はとても窮屈そうだ。そんな印象を受けた。



・明日はパフェを食べにいこう(月ノ音姫瑠 @onisumire)

 人を電化製品に例えるとしたら、きっとそれは極めて微妙な線を突く重大さなのだろう。それは飲料ほど手軽ではないし、家屋のようなものほど重大ではない。主体者が自身を白桃に例える感覚はつかみきれなかったが、ファミレスのパフェの方が、主体者の目の前の状況よりもずっと魅力的なのだろう。



・ヒミカの秘密(雨霧あめ @rain_amagiri)

 現実と非現実のそれぞれを指す言葉が混在しているので、どこまでが話者たる私にとっての現実・非現実なのか判別がつかなかった。それこそが作者の狙いなのかもしれない。もしかしたら登場する彼女もまた、イマジナリーフレンドである可能性も否定できない。小さなころの不思議な話、で果たして本作を片付けていいものなのだろうか。



・至福の時間(砂塩香味 @tekepen)

 牛丼、食べたくなってきた。

 あ、いやそれはともかく、とてもささやかで何気ない一日の一コマを描いた作品であるが、ラジオで読まれる、というこれもまたささやかなアクションが加わり、主人公もまたささやかにハッピーになっていくという話。読まれたメールの内容も気になるが、まぁそれは主人公にとってはどうでもいい、自分が送ったメールなのだから、言及しないのも当然だし、読まれたことそれ自体が喜ばしいという気持ちこそが、本当にささやかなこの作品の主題なのだろう。



・誰不知街之堅固烏龍茶(あさとよしや @shinra448)

 不思議な話、として消化するにはあまりにも話者の属性というか、語り口というか、内容というかが良くも悪くも下らなすぎて笑えてしまう、そんな話である。臨終前の今わの際に息子に渡す本が本当にサンマーク文庫でいいのか?などともうどうしようもないことを考え続けてしまう。痛快と言ってもいいくらいくだらない話である。笑えた。ありがとうございます。



・発酵する前の頃(kasa @E9wqA)

 大人になったじぶん、からみた光景?の詩作なのだろうが、最後の一行で前半のリフレインをしているあたり、果たして時系列をどこに据えたらいいのだろうか。きっとそのあたりを気にするべき作品ではないのだろう。



・中年サラリーマン(エキノコックス @Echino59x)

 この作品ですべて語りきった、という作品ではないのだろうと踏んだ。最後の一行の最後、句点ではなく読点で終わっているところから安直に連想したのみだが。平凡な中年サラリーマンでよかったこと、きっとあると、今現在無職の私は思ったりもするが、いわゆるイメージとしての平凡な中年サラリーマンには魅力がないのだろう。そのあたりの一般的なイメージとの調合こそが、少々平凡に感じてしまう作品ではあった。



・味蕾に針(渡辺八畳 @yoinoyoi)

 単語のチョイスと組み合わせが、理屈で言えない妙を持っていて、詩の全体としてものすごい圧を感じる、と思って作者を見返したら、なぁんだ主催者様じゃないですか、となったどうでもいい話から始めるんですが、最後の二連に妙を感じたのだろうなぁ、と個人的には思うわけです。なんでこの感想だけ敬語なんだろうね。媚びてるのかな?



・又或る宵~高村光太郎「或る宵」より~(中貝勇一 @U1nakagai)

 この作品に何かしらの言及をした際、私は高村光太郎にも言及することにならないだろうか、というどうでもいい懸念を抱いている。ただ言うとすれば、擬古的な文体で表現される縦書きのカタカナというのはどうもアンバランスに感じてしまうということかもしれない。私の学の無さ故のことかもしれないが。



・未満(まほろば @mahorobabababa)

 未満、というタイトルを前提とすると、ややもして本文が不気味にも思えるほどふわふわとしている。並ぶ単語は具体的なのに、なぜこうも人物の感情と風景があいまいに思えてしまうのだろうか。恐らくはそれ自体が酩酊なのかもしれない。「あたし」は「あなた」に合わせてアルコールを飲まず、しかしその実酩酊している状態のような、そんな表現なのかもしれないと感じた。「」の使い方も不気味。全体として本当に不思議な文章だった。



・社畜の思い(夕月檸檬(ゆづき れもん) @yuzukilemon_i)

 序盤でウーロン茶に過度に期待を寄せ、中盤でウーロン茶の液体性によりハプニングが起き現実に引き戻される、という構成なのかな?とは感じたが、後半の最後から三連・二連目が少々唐突で、どちらかというとタイトルから連想するというよりはタイトルを抜きにして考えた方がいいのかもしれないなぁ、などと思ったりした。



・鬼子的春天(児島成 @joe_kojima)

 序盤から中華風の印象を受けたが、最終段落で何か現実に引き戻される感じの作品だった。というか、段落の一字下げがないあたり、これは散文というより詩作なのだろうか。―記号で段落分けせず場面展開しているあたりも意図的なのだろうし。



・ラストオーダー(高嶋樹壱 @keytakashima19)

 まったく作者の意図も情景も受け取れなかったが、何か真に迫る魅力のようなものを感じた。この作品はかなり好みである。にもかかわらず語る言葉を持たない自分がふがいない。「役割をそっと免れた僕」は、本当に免れているのだろうか。「続きを書ける人がいな」いという状況において、本当に免れているのだろうか。何かこう、すごい、すごいです。(語彙力)



・金魚鉢になれない(ケイトウ夏子 @xm_rage)

 ちょっと私にとっては難解でした。最後の一行になんだか痛烈なものを感じるが、恐らく中央の一行が強調したいのだろうとは思った。意図まではくみ取れない私を笑ってほしい。



・拭い去られた紅~茶、その禁忌史~(菬人 TwitterID表記無)

 論文調の序章の体をなした作品。私は中国史に疎いので定かではないが、恐らく創作であろうと推測される。これは一種の悲劇だと受け止めたのだが、仮にこれがまかり通る茶としての存在だとしたら、現代の世界はどうなっていたのだろうという想像を掻き立てられる。



・許せそうもない(りか TwitterID表記無)

 詩作であると受け取った。実に言葉選びに妙がある。難解な言葉も使わず、奇抜な文字の羅列や組み合わせも使わず、本当に伝わりやすい比喩によって話者、あるいは作者の内面を描いている。私はこれ、好きです。



・ラベル(七辻雨鷹 @U_Nanatsuji)

 何があって現在があるのか、気になる掌編小説である。しかしながら、この作品は短編や長編を切り取ったものとしてではなく、広がりのあるあくまでも掌編小説としてまとまっているという印象を受けた。最後の一行でしっかりと締まっているし、その前の時系列のことは確かに気になるが、それは作中で言及しなくてもいいことであって、それを意図して作者も本作を書いたのだろう。



・歓楽街でウーロン茶(大正躑躅 @taisyoutsutsuji)

 掌編小説のようだが、詩的な印象を受けた。はっきり言って詩と言明してしまってもいいような作品である。いちいち言葉遣いが妙。改行も妙。人称や視点をあえて絞らず散らかしているのも非常に好印象である。べっぴんさんって言葉、いいですよね。



・初恋(佐山祐樹 @Sayama_Yuuki_)

 なにか非常に不思議な気分になる掌編小説であった。最初の段落でてっきり語り手の性別を女性だとばかりに思いましたが、恐らくは逆、もっと言うとどちらでもよいのでしょう。とても情景的というか、セリフのないモノローグもない漫画のような、絵が浮かぶ作品でした。



・宇宙の船(病氏 @ganyama)

 あの、長くないですか?

 まぁそれはともかくとして、ある種のディストピアのような、そんなSF作品であった。あえて注文を付けるのであれば、生きたまま届けるものをヒトに限定・言及しなければ、実はAIが一体何者なのか、という疑心暗鬼に読者を引き込めるようにも思えた。壮大な実験ですね、これ。



・そしてそれは思い出になる(葉山かのこ @kanobun78)

 青春小説の一種であり、メタ的な話である。これを意図してやったのであれば、非常に上手できれいにまとまっている掌編小説だ。作者が意図してなかったら、それはもう多分きっと絞り出したのだろう。最後の一行にすべてが込められているとは思うが、その一行が全体から浮いておらず、全体を締めている様は見事。



・ハイティーン(amane  @paraiba0117)

 何よりも最後の四行で感嘆が漏れた。こういった作品で実話や実際にあった噂話などを盛り込むのは容易だが、作者はピンクレディーという存在を作中の語り手の「なか」に内包してしまった。この表現・発想は私では到底思いつかない。脱帽。



・あわわ(げんなり @appgennari)

 夢じゃないと思うよ。

 これは完全に編集の妙なのですが、最後の一行が活きてますね。コロナという単語から現代なのでしょうけれど、何か懐かしさを感じる作品なのは私だけでしょうか。








 今回も好き勝手に、誰にお願いされるでもなく、誰を人質に取られたわけでもなくこの感想集を書き上げました。着手してから5か月もかかりました。しかし、その時間はすべて費やしたわけではありません。その期間のほとんどは就職活動に充てておりました。失業です。これ前にもあったな?デジャブかな?まぁそれはともかく、ひとまず次回文学フリマまでに完成させたい!という一心で取り組ませていただきました。皆様、本当にすみませんでした。そして現在もすみません。気を悪くしたらすみません。見当はずれのことを言っていたらすみません。そして未来の皆様にもすみません。なんで未来に向けて話すのかというと、もうなんというか、すみません欲が過去現在では消費しきれないからです。悪しからず。


 なお、「この感想は消してほしい」というようなご要望やご意見がございましたら、遠慮なくTwitter(現X)アカウントの@M_Night_Smokersまで遠慮なくお寄せください。すぐ消します。そして私も消えます。本当にすみません。Word換算で13771文字、作業時間は400分超えてるんです。すみません。


さて、MondayNightSmokersの次回以降の活動ですが、ひとまず秋文学フリマ東京は見送りです。当日会場に行けるかも怪しいです。多分、行けません。お会いしたかったんですけどねー、みなさんと。会うか。ほら、あなたの後ろにいますよ、私。嘘です。すみません。


多分後日、10月29日に行なった闇鍋ビブリオバトルの模様をお伝えします。レポートです。後手後手に回っちゃってすみません。


なお、11月末頃か、あるいは12月中に、可能であれば東京都湯島のシーシャ屋さんでゆるゆるポーカー会をやろうかなぁとぼんやり考えております。予定は未定ですが、熟練者お断りの、むしろルールすらあいまいな連中が集まってテキサスホールデムポーカーやろうという企画です。実はこれ、第2回目です。


今後とも、MondayNightSmokersをよろしくお願い申し上げます。中の人のことは嫌いになっても、弊ユニットは嫌いにならないでください。最近、親友と呼べる方から「あなたのやっているサークル?って要するに行き場のない成人男女がボードゲームとかやって傷をなめあう場所でしょ?」と言われました。つらいです。そんなことないです。私以外の参加者さんは輝いています。行き場がないのは私だけです。そう、仕事も、自宅も、そしてこの地球上にさえ……。


それでは、また。


賤駄木

マンデー ナイト スモーカーズ

MondayNightSmokersという、団体とまではいかない集団を2017年から細々と旗揚げしてやっております。不定期になんかする団体です。ボードゲームとかTRPGとかビブリオバトルとか

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