3日でまた書いた!(「3日で書け!」お題:パクチーに対する感想短文集)
こんばんは、MondayNightSmokersのセンダギです。
随分と期間が空いてしまいましたが、10月1日(土)に新小岩の会場にて開催されていたポエケットというイベントにて、また前回の第34回文学フリマ東京にても行なわれていた、渡辺八畳様による「3日で書け!」企画がありました。
なんと今回はお題がパクチー。発表された時にはちょっと頭を抱えてしまいました。
しかしそれでも28名の方が参加され、結果一つの作品集として完成を見た次第です。
前回も短文ではありますが感想文を書いたので、今回もやろうかなぁどうしようかなぁと思っている間に時間ばかりが過ぎ、結局一か月も間が空いてしまいました。関係者様方には本当に申し訳ございません(?)。誰に対して謝っているんだ? 頼まれたわけでもないのに? 好き勝手書いて? むしろそれについて謝れ。
ということで、今回も29作品に対して感想文をご用意しました。大したものではないので、適当に読み流してほしいと思っております。
ネタバレや過度な引用は極力避けたつもりですが、もし当記事をご覧になったほかの寄稿者様の中で、掲載の削除をお求めの方は当ユニットのTwitterアカウントまでご一報くださいませ。また、素人創作家でしかない私が偉そうにもレビューするという無作法をお許しくださいましたら幸いです。
それでは早速参りましょう。
3日でまた書いた!「3日で書け! お題:パクチー」への感想短文集
・温室の日々 夢沢那智(Twitter:@Nachi_Yumesawa)
散文的な作品だが、これは詩であろうと読み取った。特に前提のないどこか雑談めいた語り口で始まるが、途中教訓的になるかと思わせておきつつ、最後には落としどころを見出す。本当に語り部は「パクチー」と言いたかっただけなのだろうか、という疑問を読者に投げかけつつ終わる様を見るに、これが40分で出てた発想だと信じたくないほどまとまりがある。
・パクチい、パクチる、パクチくない 木乃咲冨嘉(@M_Night_Smokers)
コメントは差し控える、というコメントを残しておく。
・パクチーの花 これ(@Ritalin_203)
掌編小説である。本作に出てくる「私」がなぜ「一人」なのか、というところをぼやかしたままに終わる、とらえどころのなさそうな作品に見えるが、その実、恐らくは一人でも育て上げる、という決意は、パートナーとの死別のように感じられた。全体としてあたたかな印象を持つ、非常に毒のない小説として軽く読み進めることができた。
・付箋 橘しのぶ(@kirainarasatte)
掌編小説であると思われるが、段落や改行の妙があり、そう断定できないのが私の学のなさかもしれない。内容としては、「サダ先生」が主人公たる語り部の「子供の塾」の「先生」であるという点に、どこか全体として危うさのようなものを感じた。語り部である「私」は最後の一行から想像するに、先生と危うい関係性を持ちつつあったのだろうとも思ったが、「その後は知らない」という言葉からも、その関係性は継続的でなかったことを感じさせる。きっと、それこそがタイトルの所以なのだろう。
・雨の庭 望月遊馬(@yuma_mochizuki)
叙情的というのが適切だろうか、詩には疎いが、ひとまず本作は散文詩であろうと認識した。どこか視覚的に想像を膨らませるように読者に仕掛けをしている文体であり、そのまま素直に読めば、確かに読みにくくもあるかもしれない。その一方で、本作を高めている点も同様の部分であり、想像の余地が多分にあることによって、本作はこの短さながらも、読者にとっての光景を無限大に広がらせているのだと思う。
・パクチー女 加藤万結子(@uta_kato)
エッセイであろうとお見受けした。語り部の回顧を入れつつ、序盤と終盤をつなげていく文章は非常にすっきりとまとまっている。エッセイというものは概して無難に落ち着きがちだが、「パクチー型」という例示の言葉選びなどから、どこかユーモラスな印象を受ける。これは作者本人にとって釈然としないかもしれないが、その生き方をラベリングし、受け入れている様は、痛快というでもない、腑に落ちるとも違う、不思議な魅力を覚えた。
・パクチーを刻む女 入間しゅか(@syukasaaan)
掌編小説の一種だろう。本作は奇妙な関係性の二人が、パクチーを通じて、やはり奇妙な交流をする話だ。話の序盤も唐突だが、「彼女」の行動もまた唐突で、しかし応じてしまう「私」もまた、類まれなる変わり者なのであろう。この関係性を何事もなかったかのようにすらすらと書き連ね、読者にとっては納得せざるを得ないような状況(作品)に仕立てたというところに作者の妙があるのだと邪推した。
・とある野菜への雑感 平間みなの(@xxx_msnk)
詩的な構図の文章になっているが、ひょっとするとエッセイ的な内省の話なのではないか、と思えてならない、そんな作品であった。これが例えば、語り部もフィクションであり、この文章に書かれた思いもまたフィクションなのだとしたら、それは素直に、してやられた、というところである。最後の二行に関しては、これは味覚だけの問題などではなく、普遍的に様々なことへ延びていく語りかけなのではないか、というところも、想像の域を出ないが、考えたりした。
・パクチー草原 草野理恵子(@riekopi158)
詩なのだろうと思うのだが、どこか不安感をあおるような作品である。第二節までは詩的な表現の下、どこか「重い」印象を抱きつつも読み進めるが、第三節から先になって印象がずいぶんとかわった。重さはそのままに、何かとてつもなく恐ろしいことが起こっているように思えてならない。語り部に対して理由を問うているのは誰なのか、そして最後の二行に描かれた理由の下、実行された行為は何だったのか。想像がとめどない。不穏の一言に尽きる、秀作だと思う。
・パクチー畑につかまえられて 神野美紀(@katzeseim)
散文詩とも掌編小説ともとれる作品である。第一行目からして「騒がしい気配」という表現が巧みである。作中で起こっていることはひょっとすると「私」にとっては極めて深刻で残酷な状況なのかもしれないが、傍から見ている読者側からするとその必死な思考や様子に思わずクスリと来てしまう。最後から二行目の一文もまたどこか意味深であるが、素直に読み取ればコメディ調の痛快な作品であった。
・BBQ よしおかさくら(@sakuraga396)
詩のような構図だが、ストーリーのある内容になっている作品。女の子に連れていかれたことを嫉妬しているのか、それとも別のことによって「良かった」のかを疑問視しているのかは定かでないが、とにかく少し皮肉めいた話として読ませてもらった。パクチーの主張を比喩としてとらえるか、フィクショナルに実際に圧をかけてきているのかなど、読者によって印象も変わってくるだろう作品であった。
・陽だまり、パクチー、バカみたい 四方塚環(@yomotama)
掌編小説であるものと思い読み進めた。語り部が受けた裏切りが、草刈りのにおいによって想起されていく筋書きである。どこか物語の序章を思わせる文章であり、私個人としてはもう少し長い文章でこの作品を読みたかった、という気持ちがあった(それはレギュレーション上、無理なのは百も承知だが)。
・好き嫌い 天明福太郎(@tenmeifukutaro)
掌編小説である。パクチーをきっかけに綻ぶ人間関係、と言えばコミカルだが、しかし語り部にとっては深刻な問題なのだろう。何せ、結婚を考えていた相手に対してヒステリックになってしまうくらいだ。そのあたりも含めてコミカルに描いたのが妙なのだろうが、最後の一行のインパクトがもう少し欲しい、と思ってしまうのは求めすぎだろうか。
・セリ科定例全体集会 エキノコックス(@echino59s)
即興劇か何かの脚本(?)のような印象を持つ作品であった。セリ科ということだが、それぞれに個性(用途)が様々な野菜が出てきて、にぎやかな印象を持った。正直に言うのであれば、神のいう「あなたにしかできないこと」がなんであるのかが読み解ききれなかった。私の読解力のなさを笑ってほしい。
・香草奇譚 妻咲邦香(@chiisanakimochi)
詩の作品であるとお見受けした。要所要所に力強い単語やキーワードをちりばめた詩文は、幻想的であるように思える。しかし、一見、言葉と言葉に関連性が無いように思えるが、それぞれに隣接したり行ごとに同居していたりする様子を見ると、それはお互いに結び付き合って、なんだか支離滅裂なように思えた初読より、読み返したときの方がすんなりと読み込めた、そんな作品であった。
・慈悲を 羽田恭(@dabunkan200s)
詩作品である。慈悲を、という語り部はどの立場のものなのだろうか。そして慈悲を誰に求めているのだろうか。文字数こそ少ないが、想像の余地のある、広がりのある詩文のように思えた。
・パクチー? 空川億里(@sorakawaokuri39)
掌編小説であるが、タイトルにある疑問に対しては、断言してそれはパクチーではないのだろう。SF的な物語だと思う。滅びゆく世界の中で、「俺」は幸せを感じているのであれば、それは絶対的に幸せなのだろう。パニックホラーにもなりうるし、退廃芸術にもなりうる世界観を描き出した小説だと思う。もう少し長いものとして読みたい気もした。
・ナシゴレン幻想 小林素顔(@sugakobaxxoo)
詩として読み取った。どこか皮肉めいた作品のテイストだが、「パクチーの企み」はパクチー自身の企みであるのか、それとも人間による自壊でしかないのかに議論の余地があるように思う。第四連が特に好みであった。
・みどりのこな ケイトウ夏子(@xm_rage)
全体としてひらがなに開いた文章が印象的な詩だ。しかし、読み込めばそれは児童向けにされた平易な言葉ばかりではなく、どちらかというと対象に合わせてひらがなに、というよりは、ひらがなにすることによって起こる効果を狙ったものなのだろう。当然か。ともかく、最後の三行に関しては漢字に変換したときの妙があると思うので、そこに関して考察の余地があるように思えた。
・dream stereotype2085(@keisei1)
夢の情景を描いた詩である。幻想的な言葉の羅列に偏っているわけでもないが、しかし詩的な言葉は用いつつ、きれいにまとまっている印象を受けた。最後の二行に切なさを感じさせて読者を放逐するのはとてもズルい。第二連だけでも一編の小説に起こせそうな印象さえ受ける。私個人として好みな作品であった。
・知らないものにつける名 星野灯(@tomoruhosino)
詩作品。名を知らないものやことに対して、とりあえず「パクチー」というラベリングをするその感性は非常にわかりやすく、伝わりやすい。共感性の高い作品のように思える。最後の一文の最後の四文字に対して、私は特に前向きな印象を受けた。とても気さくで気軽で、親しみやすい「私」なのだろうなぁ、という語り部への勝手な想像である。
・くせがあるよね 七色(@0nanair0)
とても「青々しい」詩である印象を受けた。短く文字数も少ない作品ながら、私は通読していて一番【パクチー】というお題に対して丁寧な消化の仕方をしている詩だと思えてならない。パクチーを取り上げつつ、それはあくまでも手段であり、詩を通じて伝えたい作者、あるいは語り部たる「わたし」の目的は、「あなた」に対する(直接的なのかはさておき)語りなのだろう。秀作だとお見受けした。
・あらゆる場所にパクチーが あさとよしや(@shinra448)
メール文面の体裁を借りた作品だ。斬新。「パクチー愛に溢れた」この案件とはいったい何なのだろうか。想像が膨らんで仕方がない。どんな作品なんだよ、と突っ込みたくなる。作品の体裁が体裁なだけに、あまり深く考察する余地がないように思えるが、とにかく妄想・想像の掻き立てられる作品であった。
・もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング 渡辺八畳(@yoinoyoi)
詩なのかエッセイなのか判断に迷うところである、というのが正直な感想だが、ここまで書いておいてアレなのだが、このジャンル分けって果たして意味があるんだろうか。そんなことを思わせられた。この作品は詩としても、エッセイとしても成り立つ、それでいいじゃないかと思えた。要所要所、連の最後にある一行、二行にはどこかユーモラスな表現を盛り込みつつ、最後の三行でオチまでしっかりとつける。文章書きとして巧みなのだろうな、という作者への印象である。
・猫と生春巻き 元澤一樹(@sawa_sawa64)
タイトルからは想像がつかなかった内容の詩作品であった。パクチーのにおいとそれから連想されるものを混在させて食べてしまう行為は想像しうるが、それを某猫にたとえ、最後に鳴かせるあたり、発想の奇抜さ(?)を強く感じた。果たして語り部が食べたのはパクチーだったのだろうか、それとも……
・裏メニュー 病氏(@ganyama)
掌編小説であるとお見受けしたが、パクチーというお題に対してパクチーそのものではなく、語感繰りで消化し、上手にいい話にまとめている。言ってしまえばダジャレの類なのだが、どこかほっこりとする話だった。いい掌編小説を読ませてもらった。
・もう泣かないで、パクチーちゃん 大正躑躅(@taisyoutsutsuji)
掌編小説なのか、詩なのか、判断に迷った。隠喩なのかそういう呼び名なのか、「パクチーちゃん」に対して思う「これなんだよ!」という感動が一体なんであるのか、様々に疑問は残るが、それも想像の広がりのままに任せるべきなのだろう。
・パクチー 青ノ颪(@NORANEKO_AOKI)
詩であると認識した。味覚、というものを詩の想像のままに広げに広げ、言葉として落とし込んでいった結果として本作があるようにも思えた。何か脈絡のない言葉の羅列のようでもあるし、しかしそれをイメージへ、そしてイメージから感覚へとぼやかしていくと、味覚というものにたどり着いた、というのが私なりの結論である。
・月面トムヤムパクチーましまし ベンジャミン四畳半(@ShiDa4643)
掌編小説なのだろうが、この作品単体での掲載として語るのであれば、オチのついた笑い話の類なのだろう。パクチーを印象やその味などではなく、物理的に分解せしめるその発想は私には少なくとも無かった。
しかしなにより、作品投稿順ではなく掲載順として最後に来ているところに着目するならば、よくぞこの作品をこのタイミング(2日と23時間21分)で提出したと思えてならない。編集の妙でもあると思うが、正直に率直に申し上げるに、パクチーというお題に対して参加者28名+主催者がこねくり回した結果出してきた作品群としてのこの一冊に対して、最後の一行があまりにも痛烈に効いている。脱帽。
簡単にではありますが、以上です。短文を心掛けたつもりでしたが、前回もそうでしたけど、かなりの長い記事になっちゃいましたね、というか私自身の心が折れかけて途中からざっくばらんになっているのがよくわかりますね。この末尾までたどり着けた人が果たしてどれほどいらっしゃるでしょうか。
ちなみに、今回レビューしました皆様の作品がまとまっている「3日で書け!【第24回TOKYOポエケット開催記念企画】」は現在BOOTHというサービスを用いてオンライン販売中とのことです。気になる方、見てみたい方がいらっしゃいましたら、リンクを踏んでみてください。200円で販売されています。
さて、最後となりますが、弊Monday Night Smokersの次の企画予定ですが、11月20日(日)に東京都大田区の流通センター駅にて開催される、文学フリマ東京35に、二回目となります出店を検討しております。検討、というよりもう申し込みも出店料も払っているので、当日何もなければ行くんですけどね。
弊サークルはD-23に配置されました。サークル名は「MondayNightSmokers」のままです。みんな、来てね。
ひとまず、渡辺八畳様は、遅くなりましたが、ポエケットお疲れさまでした。
恐らく、文学フリマ東京35にても、渡辺八畳様が3日で書け!企画を主催してくれることでしょう。ですよね?(圧) 次回も皆さん、楽しんで参加し、楽しんで読みましょう!(圧)
重ね重ねですが、文学フリマ東京35、皆さん来てくださいね。また後日、お品書きなどをブログ上で更新できたらと思っております。たびたびくどくど告知すると思いますが、ご容赦ください。
それでは、また。
賤駄木
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